‘I drink, I travel, I write…’

 

ほどほどに酒を呑み、たまに旅に出かけ、そしてなにかを書く。

 

そんなふうに日々を過ごせたらどれだけいいだろう、といつの頃からか思うようになった。その願いが通じたのか、やがて曲がりなりにも物書きを名乗りはじめ、定められた勤務場所も勤務時間も不要の身となった。その気になれば、ずっと思い描いていた気ままな暮らしを送ることは可能なはずだというのに、どういうわけかそうはなっていない。

 

 

ひとたび酒を口にすれば、日頃の鬱屈が暴発するかのように正体不明になるまで杯をあおりつづけ、気づけば、わけもわからず誰かと罵りあいをしている。どこかへ出かけたくとも、遅々として原稿が進まないために机の前から離れるわけにはいかず、まれに出かける機会があっても原稿が気になってとても旅行気分などになれない。いざなにかを書こうにも、思索はとりとめもなく頭の中でうずまくだけで、血のかよった言葉として現れてくれない。そして、また痛飲し、自分を愚かにしてしまう。

 

理想の暮らしは遠い。

 

問題は原稿が書けないところにある。原稿さえすらすらと書ければ、きっとすべてはうまくいく……そうなのだろうか。さらさらと紡いだ文章が、果たして誰かの胸を打つようなものになるのだろうか。書き手の呻吟こそが言葉に魂をこめるような気もするし、そんな書き手の事情など文章にはまったく関係ないような気がしないでもない。わからない。

 

 

 

 

たとえどれだけ愚かになろうとも、いまはまず意地でも机にかじりつき、原稿を進めるよりないのかもしれない。いや、きっとそうなのだろう。

 

思い描いた日常は、たぶんその先にある。